顕微鏡解析に使用する試料片を作製する工程の一つに、金属組織検査用の研磨があります。金属表面から材料を除去するためには、一般に粗粒の研磨剤から次第に細粒のものに切り替えながら、求められる表面性状が得られるまで研磨します。研磨時には砥粒は結合剤に埋め込まれた状態にあり、琢磨により結合が劈開します。
試料片の用途によって、求められる表面性状は異なります。組織を見極めるためには、必ずしも最高精度の試料面が必要なわけではなく、多くの場合ある程度の精度で研磨されていれば後続のテスト(硬度テストなど)を実施できます。
いずれの場合でも、再現性を保つために金属組織検査用試料片の作製は体系的に行う必要があります。そうすることで初めて、コストを最低限に保ちながら、最適な研削成果を得ることができます。
金属組織検査用の研磨には、マクロ研磨とミクロ研磨があります。
マクロ断面積 | ミクロ断面積 | |
エラー判定サイズ | >100 µm | <100 µm |
表面 | 非加工または研磨 | 精研磨と琢磨、必要に応じてエッチング |
顕微鏡 | 実体顕微鏡 | 落射型光学顕微鏡、明視野 |
例 | 割れ、収縮穴、HAZ(熱影響部) | 非金属介在物、層、ミクロ構造変形、粒界 |
硬度測定 | マクロ硬度/低硬度 | 低硬度/ミクロ硬度 |
溶接又ははんだ付けされた連結部を解析するときなど、顕微鏡を一切使わずに、または6倍率~60倍率の実体顕微鏡で組織を観察、評価するには、マクロ組織断面をもつ試料片を作製します。
一般的な構造解析ではケーラー照明を光源とする50倍率~1000倍率の光学顕微鏡で組織を観察、評価しますが、そのためにはミクロ断面をもつ試料片を作製します。
マクロ断面の評価には通常、琢磨面ではなく精研磨面で十分なので、この区分は重要です。それに対してミクロ断面の評価では、歪みのない琢磨面が必ず求められます。
金属組織検査の研磨は、以下の3段階に分かれます。
金属組織試料片の作製工程では、良好な研磨結果が得られるように適切な粒度を選択することが重要です。後続の研磨段階(粒度)で、その前の研磨段階の粗さを相応の時間で修正または除去する必要があります。
研磨剤自体も研磨対象となる材料によって異なってきます。軟質材には、主にケイ素(SiC)を使ったサンドペーパー、ホイル、研磨盤または砥石を使用します。硬質材(300 HV以上の硬度をもつ硬化鋼やセラミックなど)には、ダイヤモンド研磨盤も使用されます。これらは通常、磁性キャリア盤に固定されます。これには、得られた平坦度が最初から仕上げ琢磨まで維持できるというメリットがあります。また、複数段階に分けて研磨する必要がなくなります。大型の試料片や大量の試料を作製するには、酸化アルミニウム(Al2O3)系の砥石を使うこともできます。ただし、特殊な砥石研磨機が必要になります。
粒度の小さい炭化ケイ素サンドペーパーで作製された試料面には小さな変形が残りますが、これは琢磨によって直に除去することができます。または、いわゆる精研磨盤を使用して金属組織試料片を作製することもできます。その際、ダイヤモンド懸濁液と潤滑剤を塗布します。特に薄被膜、窒化物層、表面脱炭の試料を琢磨後、適切に解析するために、このような精研磨が役立ちます。特殊なダイヤモンド研磨盤を使えば、従来では金属組織検査用琢磨だけでしか実現できなかった表面平滑性を得ることも可能となります。QATMでは、最小で3 µmのダイヤモンド粒子を使った研磨盤をご用意しています。適した材料に使用するならば、ダイヤモンド研磨盤は経済メリットの高い選択肢です。また、環境負荷も低いことからも、考慮に値する加工方法です。
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