3D印刷技術(当初は光造形法と呼ばれていました)は、1983年にC. ハルによって発明され、1986年に特許が取得されました。今日では、製造業界で確立された技術となっています。来る5年間で同技術の世界的な売上は774%増となる見込みで、それに伴い3D印刷は近い将来、最も急成長を遂げる市場に数えられています。3D印刷方式には様々な種類がありますが、その一つが粉末焼結積層造形法(レーザー焼結法)です。この技術は、レーザーにより粉末材料を溶接して造形することを特徴としています。加工したい形状に応じて照射軌道を事前に規定し、それに沿ってレーザー溶接を行うことにより製品を作製します。その際、材料に使用された金属粉はレーザー照射の熱で溶融され、溶接ビードが形成されます。
事前に定義された軌道に沿ってレーザー照射することで溶接ビードを重合し、最終的な3次元形状が得られます。粉末焼結式積層法の最適化においては、いかに経済的に高品質・高精度の加工を行うかがポイントになります。また、柔軟な拡張性も重視されます。大型構造物に対応する一方で、100 µm未満のマイクロ構造の造形も求められます。粉末焼結式積層法には、主に以下の材料が使用されます。
粉末焼結式積層法のプロセス
ここでは、粉末焼結式積層法で作製したスチール試料片(X6Cr17、材料番号1.4016)を検査しました。第一ステップとして、ワークピースから検査用組織片(試料)を切り取ります。ピース全体の性状を代表する試料を採取する必要があります。この工程には、CBN(立方晶窒化ホウ素)切削ホイール(板厚: 0.65 mm、直径:153 mm)
装備のQATM精密切断機を使用しました。送り速度1mm/s、回転速度4500 rpmで直接、パルス切断(0.2 mmずつ前後揺動させながら切断)しました。研磨・琢磨処理の便宜を図るために、切断された試料片を埋込用樹脂(EPO 黒色)に熱間プレスで埋め込みました。 埋込みには180°Cで6分間にわたり200 barの圧力をかけ、その後6分間の冷却サイクルを設けました。埋込処理のメリットの一つは、(上面と底面の)平行性が高くて、高さ51 µm ±1 µmの埋込み試料が得られることです(±1 µmの許容誤差は、試料高さを測定するキャリパーゲージの違いによるものです)。 その後、埋込み試料は半自動式研削・研磨機によって(個別荷重式で)研磨、琢磨されました。研削工程は以下の2段階で行われました。まず、粒径P240の炭化ケイ素(SiC)サンドペーパーで平面研削を行い、切断工程で生じた歪みを除去します。次に粒径P600のSiCペーパーで試料面を平滑化し、琢磨用に肌理を整えます。続く琢磨工程でGalaxy BETA研磨布(硬質)と砥粒径9 µmの多結晶ダイヤモンド懸濁液を使って試料を予備琢磨の後、シルク製の中硬質研磨布と砥粒径3 µmの多結晶ダイヤモンド懸濁液を使って琢磨しました。仕上げ工程では、軟質の合成研磨布とEposil Mを使用して最終琢磨を行いました。参考までに、この試料の作製条件を以下の表に記載しました。
ステップ | 媒体 | 潤滑剤/懸濁液 | 速度 (rpm) | 試料ホルダーの回転方向 | 個別荷重 (N ) | 時間 ((分) ) |
研磨 | SiC, P240 | 水 | 150 | 右回転 | 30 | 1:00 |
研磨 | SiC P600 | 水 | 150 | 右回転 | 30 | 1:00 |
琢磨 | BETA | アルコール , ダイヤモンド 9 µm(多結晶) | 150 | 左回転 | 35 | 4:30 |
琢磨 | GAMMA | アルコール , ダイヤモンド 3 µm(多結晶) | 150 | 左回転 | 35 | 4:00 |
琢磨 | OMEGA | 水, Eposil M | 100 | 右回転 | 30 | 1:30 |
組織検査の他にも硬さ試験などの試験において信頼性のある有意な試験結果を得るためには、試料面を平滑に仕上げる必要があります。前述のプロセスで金属組織検査用試料を作製することで、硬さ試験に最適な試料片を得ることができます。QATMでは優れた性能のマイクロ硬さ試験機や光学解析装置を提供しています。
QATMでは、材料組織・金属組織検査や硬さ検査のために、耐久性に優れた最先端機器を幅広く取り揃えています。各産業分野のアプリケーションに詳しい専門家がご相談に応じます。皆様のニーズにぴったりのソリューションをご提案させていただきます。